お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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コンくんは意外にも、着物ではなくTシャツとズボンに着替えていた。 着物姿の子どもは目立つから、という理由であることを、バスを降りてから教えてくれた。 「人間の姿だと子どもにしか見えないので、着物で行動しているとどうしても目立ってしまうのです」 観光地だけあって浴衣を着ている観光客はわりと多いけれど、確かに和装の子どもなんて目立つに決まっている。 その上、こんな口調の子どもが買い出しに来れば、〝普通じゃない〟と思う人もいるかもしれない。 「買い出しの時には人間の目にも映るようにいたしますが、我々はあまり目立ってはいけません。本来は、人と長く話すことも避ける方がよいのです」 「それってやっぱり、神様や神使だから?」 「そうとも言えますし、そうじゃないとも言えます」 「どういう意味?」 「本来、神様や神使といのはあちこちにいるものなのです。普段は見ようともしないし、見えるとも思わないので、見ることができないだけなのです」 「じゃあ、見たいと思えば見えるってこと?」 「残念ながら、そういうわけでもありません。見るということに関して言えば、まぁちらりと視界の端に映る程度のことであればわりと誰でも経験したことがあるかもしれませんが……。そもそも、その姿を神様や神使だと思うことがないのです」 コンくんは、なんでも教えてくれるのだろうか。 さっきから全部答えてくれているのはありがたいけれど、こんなにも訊いてしまってもいいのかと心配になる。
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