お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「どうかされましたか?」 「あ、えっと……こんなに色々訊いてるけどいいのかな、って」 「大丈夫です。答えられないことは言いませんから」 子どもの姿をしていても、コンくんはやっぱり二百年も生きているというだけある。 ごく普通にニコニコと笑って、私の戸惑いを当たり前のように跳ねのけた。 「さきほどの話に戻しますが、人はそもそも、大半の者が歳を重ねるごとに目に見えないものを信じなくなります。神使が言うのもおかしな話ですが、神様や神使、妖精や妖などの類もそうですね」 そういえば、幼い頃は神様も魔法も信じていた。 オバケは苦手だったけれど、妖精やサンタクロースと同じように、根拠もなく〝いる〟と思っていた。 神様に至っては、雨天様と出会う前であっても、時々都合よくお願いしたりもした。 普段は特に信仰深いわけでもお参りに行くわけでもないのに、ここぞという時に〝神頼み〟をした覚えは何度かある。 「ですから、見ようと思っても潜在意識では〝いないもの〟という気持ちがありますので、見えないことがほとんどなのですよ。こちらとしては、神様や神使といってもなんでも屋ではありませんので、都合よく自身の欲望のために会いたいとか見たいと思われても困るのですが……」 痛いところを突かれたような気がして、苦笑いしかできない。 だけど、ちょうどおばあちゃん家の前に着いたから、流れでこの話は終わった。
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