お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「我々ができるのは、あくまで傷を癒やすお手伝いまでなのです。それなのに、私の判断が間違っていたために、その者の欲が深まって……。悲しいことに、自らの手で努力をすることを諦めてしまったのです」 膝で抱えている私の荷物をギュッと握り、瞳を伏せる。 そんなコンくんの気持ちをすべて理解できるわけじゃないのに、私まで心が痛む。 「居心地が良過ぎるというのもいけないのだと、あの時に学びました……」 「そっか……」 「結局、屋敷に留まらせることはできず、傷を癒やせないまま忘却の術をかけることになったのです」 「……その人って、どうなったの?」 「屋敷でのことを忘れたおかげでしょう。自身の手で努力して、妻の忘れ形見であるふたりの可愛い子どもを守り、天寿を全ういたしました」 ためらいながらも尋ねると、コンくんは予想に反して微笑んだ。 それは、表情も答えも悲しいものなんかじゃなかった。 「まぁ……悲しいことに、最後まで傷を抱えたままでしたが、雨天様は『これでよかったのだ』とおっしゃっていました。きっと、私を慰めてくださっただけだと思いますが……」 「そんなことないと思うよ」 「え?」 自嘲気味に付け足された最後の言葉を否定すれば、コンくんが不思議そうに小首を傾げた。 無言のコンくんが続きを待っているのは一目瞭然で、私は瞳を緩めて再び口を開いた。
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