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「大切な人を亡くした痛みなら、私もわかるつもりだから、その人はきっと悲しみを忘れることはできなかったとは思う。でも、傷ついたからこそ、〝同じ大切な人〟を失った子どもたちを守り抜けたんじゃないかな」
「ひかり様……」
「……なんて言っても、私はまだ全然立ち直れそうにないし、私にはよくわからないんだけど……。でも、雨天様はきっと、慰めるためだけにそんなことは言わない気がするんだよね」
雨天様はとても優しいけれど、嘘で慰めるようなやり方はしないと思う。
雨天様のことはまだあまり知らないのに、不思議と確信めいたものすらあった。
「確かに、雨天様はとてもお優しいですが、とてもお厳しい方ですので、ひかり様の言う通りかもしれません」
「雨天様って厳しいの?」
「えぇ、とても。なんでも、雨天様ご自身も先代に厳しくされたようで、お客様のおもてなしと料理については特にお厳しいですよ」
「そうなんだ」
「今朝はギンがお味噌汁を作りましたが、雨天様があんな風にギンを褒められるところは滅多に見ることができません。特に、料理はおもてなし用の甘味にも繋がりますから。料理を担当するギンは、おもてなしの分野においては私以上に褒められることが少ないかもしれません。本当は、私よりもギンの方が優秀なのに……」
そこで言葉を止めたコンくんに続きを促したかったけれど、安易に踏み込んではいけないような気がする。
そして、それが正しいと言わんばかりに、雨の中を走るバスがちょうど目的の停留所に着いた。
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