お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「ご注文の栗羊羹です」 コンくんの言葉とともに風呂敷が開かれ、中からは笹の葉のようなものに包まれた棒状のものが出て来た。 「おお、これこれ。これが食いたかったんだ」 「今日のものは自信作だ、とのご伝言です」 「お前んとこのご主人様は、いつも自信作だって言うだろう」 ふたりのやり取りに違和感を覚えたのは、猪俣さんがコンくんだけじゃなく、雨天様のことまで知っているような口ぶりだったから。 むしろ、さっきの〝成仏〟のくだりを含め、事情を知っているとしか思えない。 「あの、猪俣さんって何者なんですか?」 「なんだ、コン。説明してないのか」 「えぇ、まぁ。ひかり様が再訪されたのは昨日だったもので。それに、ここに来るまでは他のことを話していましたし」 「なるほどな」 猪俣さんは苦笑すると、私を見て優しく笑った。 「俺は、元神主なんだ。といっても、無名の小さな神社で、代々身内でひっそり守っているだけなんだが……。で、なんの因果か、うちの一族は代々視えやすい方らしくてね」 「……視えやすい?」 小首を傾げた私に、猪俣さんがフッと口元を緩めた。
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