お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「いわゆる、幽霊や神様の類だよ。まぁなんでも視えるわけじゃないし、視えても関われるとも限らない。だが、コンのことは俺が子どもの頃から知っているんだ」 「コンが百三十歳くらいの頃、猪俣様がお生まれになりました」 「なんでも、こいつのとこの先代がうちの遠いご先祖様と縁があったらしくてな。その縁で、今もこうして付き合いがあるんだ」 「猪俣家には代々、甘味をお持ちする代わりにこちらで手に入らない材料を我々の代わりにご用意していただいているのです」 「神様が作った甘味なんて、なかなか洒落てるよなぁ。しかも、雨天様のお茶屋敷の甘味は抜群に美味い。縁を繋いでくれたうちのご先祖様には、感謝してるよ」 説明してくれる猪俣さんとコンくんを交互に見ていると、猪俣さんは「他人には食べさせてやれないのが残念だけどな」と眉を下げた。 意味がわからずにいると、コンくんが微笑んだ。 「雨天様の甘味は、本来は屋敷に訪れた者だけが口にできるものなのです。先代と猪俣家の契約により、猪俣家は特別ですが、猪俣家以外には食べさせないというのも契約のひとつなのです」 「じゃあ、お裾分けとかはできないってことなんだ」 「えぇ。これはあくまで、猪俣家へのお礼であり、他の者のために作ったものではありませんから」 「まぁ、そういうことだな」 そこでこの話は終わってしまったけれど、思っていたよりも雨天様の甘味を口にする条件には厳しいみたい。 だとしたら、二度も食べることができた私は、自分がいま思っている以上に幸運だったのかもしれない、なんて考えていた――。
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