お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

17/39

344人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「おかえり」 「ただいま帰りました!」 「ひかりも、おかえり」 「えっと……ただいま」 「コン、材料は台所へ。猪俣様はお元気だったか?」 「えぇ、相変わらずでございました」 お屋敷に着くと、雨天様が優しい笑みで出迎えてくれ、台所に向かいながらコンくんの話を楽しそうに聞いていた。 その様子を見て、ますます不思議な気持ちになってしまう。 コンくんいわく、実は雨天様と猪俣さんは会ったことはないのだとか。 理由は、雨天様はお屋敷の敷地内から出られないし、猪俣さんはお屋敷の場所を知らないから……らしい。 ここにはコンくんの声に呼ばれれば来ることができるとはいえ、簡単に足を踏み入れられる場所じゃないとは聞いている。 そして、必ずしもコンくんの声が聞こえるわけじゃない、とも。 ただ、猪俣さんに関して言えば、代々このお屋敷との縁があるのだし、なによりもコンくんの姿が見えるのだから、お屋敷に来られそうなものなのに。 コンくんに尋ねてみたところ、それとここに入れるというのはまた別の問題らしい。 なんだか納得できるようなできないような、なんとも言えない気持ちだったけれど……。 用意されていた美味しい昼食を食べている間も、雨天様がコンくんに色々と訊いているところを見ると、そういうものなんだと納得するしかなかった。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加