お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「さて、ひかり。片付けが済んだら、今度は私が庭を案内しよう」 「え? いいの? 仕込みとかあるんじゃないの?」 「猪俣様への手土産の栗羊羹が、今宵の甘味なのだ。あとは冷やしておくだけだし、私もひかりと少し話したい」 ニッコリと微笑まれて、その綺麗な瞳に吸い込まれそうになった。 初めてお屋敷に来てから今日までの三日間は、怒涛の日々だったからあまり意識する余裕がなかったけれど、雨天様には人間離れしたような美しさがある。 銀糸のような髪、涼しげなのに力強い切れ長の瞳、高い鼻。 よく見れば右の瞳の下には小さな泣きぼくろがあって、それがまた雨天様の秀麗さを際立たせているような気がした。 「私では不服か?」 「ううん、全然! えっと……よろしくお願いいたします」 「ああ」 私が頭を小さく下げると、雨天様が瞳をそっと緩めた。 切れ長の双眸が柔らかな優しさを灯し、やっぱり吸い込まれてしまいそうな気持ちになる。 「でしたら、片付けは我々がいたしますので、おふたりはお庭へ」 そんな私を余所にギンくんが笑顔で提案してくれ、私は片付けもさせてもらえないまま、雨天様に促されて……。 雨天様を追って、玄関へと向かうことになった。
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