お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「だからこそ、せめてここに来た者はみな、救いたいと思っている」 そう、優しい声音で紡がれた時。 雲の隙間から柔らかな細い光が落ちて来て、雨雲がゆっくりと散っていった。 まるでスローモーションのように流れていく雲とともに雨が弱まっていき、そのうち大きな音を立てていた雨が止まった。 「これ……雨天様がやったの?」 「ああ。少しの間なら止ませることができる。まぁ、またすぐに降らせることになるがな」 肩を竦めた雨天様が、「足元の水たまりを見てごらん」と笑った。 傘を下ろしてから言われるがまま視線を落とすと、そこには見たことがある場所が映っていた。 「なにこれ……」 「ひがし茶屋街の風景だ」 「どうなってるの?」 「これも、私の力のひとつなのだ」 驚いて地面に釘付けになる私に、雨天様は笑っているみたいだったけれど……。 それを確かめる余裕はなく、水たまりの中で行き交う人々の様子を見ながら目を見張った。 その中にいる人々は、古い街並みを笑顔で楽しみ、写真を撮ったり一服したりしていた。 それは、ひがし茶屋街で見る光景そのものでしかなかった。
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