お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

どこからともなく香ってくる、出汁の匂い。 鼻先をくすぐるそれは、どこか温かくて懐かしく、おばあちゃんのお味噌汁を思い出した。 おばちゃんのお味噌汁はいつも、とても優しい味がした。 丁寧に出汁を取り、自家製の味噌で味付けされていて、たとえば具材がなくても何杯も飲みたくなるくらい好きだった。 また、飲みたいな……。 そんなことをぼんやりと考えながら瞼を開けた先にあったのは、見知らぬ天井。 自分がどこにいるのかわからなくて慌てて体を起こした直後、昨夜のことをも思い出した。 あ、そっか……。雨天様の家でお世話になることにしたんだった。 壁にかけられた古時計が差している時刻は、七時四十分。 朝食は八時だと聞いていたから、ひとまずコンくんが用意してくれた朝顔が描かれた浴衣を整え、髪を軽く手櫛で梳いてから部屋を出た。 廊下はしんとしていて、一瞬誰の気配もないような気がしたけれど……。 すぐに出汁の匂いが強くなったことに気づき、どこか安堵感にも似たものを感じていた。 私が借りた二十畳ほどの部屋と客間の中間に台所があることは、昨夜コンくんから教えてもらった。 すりガラスの扉が閉まっていたから台所の中までは確認できなかったものの、いい香りの元を辿るように足を進めていく。
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