今と昔の温度の差

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
昔の彼女はとても明るくて温かくて陽気で、まるで太陽のような女性だった。 電車内で座れない老人がいれば席を譲り、涙を流す子供がいれば悩みを解決して、友達が頼ってきた時には真摯に話を聞いて、困った人がいれば助ける人だった。 そんな彼女と一緒にいる時間はずっと楽しくて、触れる先からは暖かさが伝わってきて、心に平穏をくれて、毎日がカラフルに色づいていて、退屈とは最も縁遠いと思ってた。 だけど、今は彼女の暖かさは感じない、手を触れていてもその熱は伝わってこない、瞳は閉じられていて口元はうっすらと微笑んでいるようで、まだ眠っているだけだと信じたい。 だけど彼女はもういない。この世にないないのだ。 そんな現実を受け入れきれなくて、まだ触れ合えば暖かさが伝わると信じてる、冷たくなった彼女の手を握り続けた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!