これ全てが序章に過ぎない

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これ全てが序章に過ぎない

事実は小説より奇なり、なんて言葉がある。 現実は小説なんかの出来事よりもおかしなことが起こるという意味だ。 けれど、僕はその言葉を嘘だと思っている。 だってそうだろう?現実で起こり得ない出来事が起こせる、それこそが物語の良さだと思うから。 僕は恋愛小説が好きだ。 真摯な恋愛感情はとても儚く心温まるから。 ファンタジーやSFみたいな、それこそ現実とはかけ離れていることをテーマにしているジャンルとは違って、恋愛小説は比較的現実味を帯びている。 そんな恋愛小説ですら、よほどのことがないと現実が物語を上回ることはない。僕はそう思う。 例えば──平凡な主人公が何人もの美男美女にモテたり、苦難の末に付き合った途端にどちらかが病気や事故で死んでしまったり、肉親や先生生徒との禁断恋愛なんかもある。 そして忘れてはならない恋愛小説の王道、恋慕と恋慕が行き交う複雑な三角関係。 どれだけ現実的な話でも、驚くほど上手いタイミングで仲がこじれて、最後は感動的なラストで締めくくられる。 正直、そんな物語たちに勝る現実なんてそうは無いと思う。 もちろん、全く無いとは言えない。 それでもやっぱり……現実で小説よりもおかしなことなんてまず起こらないはずだ。 そう、思っていたんだけど……。
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