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今日、この世界に四人の魔導師見習いがやってくる。佐藤健太の仕事はその四人の魔導師見習いを立派に育て上げることだ。
とは言えど、普通の見習いではなくやってくるのは見習いは見習いでも落ちこぼれの魔導師ばかりだ。
世界でも有数、中でも日本に唯一存在する自然魔術・人工魔術を取り扱う閻魔ヶ刻魔導学園。
その学園では年々減る魔導師の就職率に焦り、急遽魔導師たちを増やすため今年からとある制度を導入した。
授業の無断欠席や素行不良、極端に成績が悪く実技を不得意とする生徒数名に強制的に補習授業を受けさせるというものだ。そして、その補習授業の場所は佐藤健太が存在するこの世界そのものだった。
とはいってもその大掛かりな補習が行われるのは初めてなので、試運転ということで補習者には落ちこぼれの中でも特に問題がある四人が選ばれたのだった。
フィールド内、エリア1。
そう佐藤の脳に登録された長閑な町のとある一軒家。
質素だがぬくもりのあるその素朴な部屋の中、この疑似世界の住人である佐藤健太はなにもない空間から現れた四人の補習者たちの顔を眺めた。
予め補習者たちのデータは全て把握しているので特に戸惑うこともなく、そして同様に補習者たちも予めあちら側で補習のことを聞かされているのだろう。見慣れない風景の中だろうに、全員が全員取り乱すこともなくただ目の前に佇む佐藤と対峙していた。
そして、それを生気のない瞳で受け止めた佐藤健太はぺこりと一礼した。
「……それでは改めて自己紹介させていただきます。俺は今日から皆様のサポートをさせていただく佐藤健太と申します」
「……サポート?」
佐藤の第一声に反応したのは起きているのか寝ているのかよくわからないようなやる気のない雰囲気を纏った青年だった。
艶やかな黒い髪を無造作に流し、着崩した制服が嫌に似合っている気だるげな青年の名前は――三十三十月
「ほら、さっき岩滑先生が言ってたやつじゃないかな。案内役のNPCがいるって」
よくわかっていないらしい三十三に隣にいた茶髪の青年が耳打ちする。
柔らかい独特の雰囲気を纏った線が細いその青年の名前は因幡樂。顔そのものは整っており、相俟って中性的に見えるがその骨格はしっかりしているようだ。
そして、因幡たちのやり取りを見ていた佐藤に一人の青年が近付いた。
「へーこいつが俺らサポートしてくれんだ。どうせならもっと可愛くておっぱいでかい方がよかったよな、ミトちん」
「そうですね。ロボットならロボットらしく変身出来ないんですか? もしくは合体」
そうミトちん、もとい三十三十月に話し掛ける軽薄そうな青年は三十三の悪友である伯万玄竜だ。
青いフレームの無骨な眼鏡を指で上げ、興味深そうにこちらを見てくる伯万。その不躾な視線に動じることなく、佐藤は無茶苦茶なことを言い出す二人に向かってただじっと視線を返した。
「申し訳ございませんが俺はあくまで非戦闘型のサポート用アンドロイドです。出来ることは道案内とこの世界での過ごすヒントを出すくらいしか出来ません」
「へー。セックスは?」
「はい?」
「だからセックスは出来んの?」
「…………」
伯万玄竜。無断欠席が日常茶飯事の赤点常習犯であり再テストすら欠席し、今の今まで教師たちから逃げ伸びることが出来ていた程のすばやさと隠れ身の使い手であり、悪友である三十三と学園内を引っ掻き回す素行不良。そう、事前に埋め込まれていた伯万のデータには記載されていた。どうやらデータ通りの人間のようだ。なんて思いながら無表情のまま伯万を眺める佐藤。
そんな佐藤の視線に伯万は下品な笑みを浮かべる。
「あ? なんだよ。まさかアンドロイドのくせに恥ずかしがってんのか?」
「……いえ少々呆れただけですよ。そういう目的のために作られた機体もありますが、俺は元々性行用には出来てないのでそのようなことは……」
できません。そう、佐藤が続けようとしたときだ。
「本当か? でもロボでもチンポくらいは作られてんだろ」
そう、伯万玄竜は佐藤の下腹部に手を伸ばす。
あまり着飾らず、親近感が沸くように閻魔ヶ刻学園指定のジャージを着ていたのだがどうやらそれがまずかったようだ。履いていたジャージのゴムを引っ張るように、伯万は佐藤の下半身に触れる。ジャージの下には下着すら身に着けていない、そのままの姿の佐藤に伯万は目を丸くした。
「うわ、まじか。ノーパンかよ」
「下着の登録はされていませんでしたので」
「でも、一応ロボでもちんこはついてんだな。萎えてるし」
「より人間の生体に近付けることで親近感を覚えていただけるように、と博士は仰ってました」
「その博士有能じゃん」なんて言いながらも伯万はジャージの下で萎えていた佐藤の性器を弄ぶ。小振りな睾丸を包み込むように掌に収め、掌全体で柔らかく揉んでみるが佐藤の顔色はやはり一つも変わらない。ただ冷めた目で伯万によって弄られている己の下腹部を見下ろしていた。
初対面の相手に無礼を働かれようともやめてくださいと嫌がることもしない佐藤。そんな佐藤の代わりに、あまりにも突然の伯万玄竜の行動に狼狽える青年が一人いた。
「な……っなにをしてるんだ、お前は!」
部屋の片隅。三人の補習者から逃げるように座り込んでいたその一人の生徒は青褪め、声を上擦らせる。
――頸城万里。
三人の補習者に比べて比較的常識と倫理観を持ち合わせたその青年は呆れ果てた様子で伯万を睨む。
「何ってそりゃあ……感度チェック?」
「何考えてるんだ、そんな必要はないだろ!」
「いーや大事だろ、俺らの補習をサポートしてくれるんだからな。お前だってビンカンで感度良いほうがいいじゃん」
「……っ、頭イカれてるのか、お前」
頸城と言い争いながらも伯万は佐藤の下半身を弄ぶ手を止めなかった。
硬く細い指先でぐり、と亀頭の窪み――尿道口をこちょこちょと穿られれば、登録されていない不快な感覚に佐藤は眉根を寄せる。そこでようやく伯万の手を掴み、自身から引き離した。
「おっと……やっぱ感度悪いな」
「なにを期待してるのか知りませんが、俺には不要な機能です。……それよりも、貴方がたの自己紹介がまだ済んでいませんよね」
「へぇ、最近の人工知能はマナーの指摘までするんだ。すごいね」
伯万と睨み合っていると、そんな様子を傍観していた因幡樂が口を挟んでくる。柔和な笑みを浮かべ、興味深そうに佐藤に歩み寄る因幡。
「……ああ、自己紹介だったね。僕は因幡樂。君みたいな子好きなんだ。……ああ、因みにこれは下心はないから」
「よろしくお願いします、因幡さん」
そう握手を求める佐藤に、因幡は「よろしくね」とその手を握り返す。冷たい手だ。
他の三人の補習生は因幡の名前を聞いて驚いたように目を丸くした。
「因幡?」
「因幡樂って確か、人工魔術科の……」
「あれ、なにもしかして僕って有名人? 照れるなあ」
そう言う因幡は、佐藤の目から見ても全く一ミリも照れているようには見えなかった。
魔術には二種類のものがあった。
精霊や魔界の力を借りた自然魔術と、機械や科学の力を利用する人工魔術。
閻魔ヶ刻学園でも双方の魔術の授業を取り扱っており、因幡樂は人工魔術科の入試試験をトップで入った新入生だ。
おまけにその試験でカンニングをして満点を取ったものだから学園内でも一際問題になった。
――何しろ、違反に厳しい魔導師たちの目を掻い潜ってカンニング行為を働いたのだ。
悪い意味でも確かな才能と実力が備わっているだけに教師たちも退学処分することは出来ず、毎日因幡は授業には欠席し事実に籠もりきって自習に励んでいたようだ。
しかし、そんな彼がこの補習に参加しているというやはりなにかしら他にも問題があったのだろう。佐藤が因幡のデータを解析しているのを知ってか知らずか、因幡は「ああ、そうだ」と佐藤の手に指を絡める。
「健太くん、体弄らせてよ。せっかく噂の補習授業受けに来たんだから色々勉強したいんだよね」
「……弄る?」
「うん、例えばね」
絡められる指先。その指の谷間をすり、と撫でられる。
なにをするつもりなのかと目の前の因幡を見上げたとき、不意に伸びてきた因幡の腕に腰を抱き寄せられた。
「因幡さん?」
「ああちょっと待ってね、そのまま……」
そう、因幡の手が腰を撫でる。骨張った手は無遠慮に臀部まで降りていく。ジャージのウエストのゴムを引っぱるようにして、因幡の手はするりと下腹部に触れた。伯万とはまた違う、じっくりと肌の感触を確かめるような手つきだった。
下着一つ身に着けていない無防備な佐藤の臀部に触れる因幡に、それを見ていた頸城が「おいっ!」と声を上げていた。それを無視して、因幡は柔らかな佐藤の尻、その割れ目に指を這わされる。その奥、硬く閉じた肛門の感触に触れて因幡は微笑んだ。
「こうやって、君のアナルに直接指を突っ込むんだよ」
耳元で因幡は囁く。佐藤がそれに応えるよりも先に、因幡は口を閉じたそこへ指を埋め込んだ。
元々排出という概念がない佐藤の肛門は硬く閉じられていたが、体のつくりそのものは人間を忠実に再現していた。
ほんの少し指先に力を加えれば、埋め込まれた因幡の指は体内へと沈んでいく。
「因幡さん……これは……」
肛門に指を入れられ、中を探られながらも佐藤の表情は崩れない。目の前の生徒がなにを企んでいるのかなど理解できない。それでも自分の仕事である進行を妨げられていることに不快感を覚えた佐藤は、この行為を中断させようと身動いだ。それでも因幡は無視して指を根本まで挿入するのだ。
異物を拒もうと締め付けてくる肉壁の感触。人に近い体温。非戦闘型だからだろう、抵抗しようとする力はそれほど強くない。
「因幡さん、これ以上無駄な行為は……」
「無駄じゃないよ。……これは大切なことなんだ」
「なんだぁ? 因幡、お前マグロが好きなのか? そいつのケツいじっても反応なくてつまんねーだろ」
「ふふ、そうだね。だから……――」
因幡の胸元を押し返し、その腕から逃れようとしていた佐藤を強く抱き締めたまま因幡は根本までずっぽりと挿入された指で体内を探る。内壁を弄り、執拗に感触を確かめていた因幡だったがやがてその口元に笑みが浮かんだ。そして、因幡の指が入り口からはそう深くない位置にあるしこりを探り当てたとき、佐藤は胸の奥がざわつくのを覚えた。
「……待ってください、因幡さん」
そう、佐藤が因幡を止めようとしたときだ。因幡はその佐藤の制止を無視して、そのしこりを指の腹で揉むように強く圧した。
瞬間、佐藤は己の体内でカチリとなにかが切り替わったような感覚を覚える。それは感じたことのないものだった。
「そう言えば確か君、伯万くんだっけ? 感度いい方が好きって言ってたよね」
「っ、因幡さん、なにを……」
「ちょっとした裏技だよ。全身の神経を過敏にするために君のコード弄ったんだ」
瞬間だった。先程まで異物感しかなかった体内の因幡の指に全身の神経が集まり、反応する。それは佐藤にとって感じたことのない領域だった。
じぐじぐと広がる甘い熱に、狼狽え、動揺する。因幡を見上げれば、そんな佐藤の反応に「良かった、成功したみたいだね」とその薄い唇に笑みを浮かべるのだ。
「……ぁ、あなたは……」
「せっかくなんだ、君も学んでいった方が楽しいだろう?」
「……ッ!」
ぬちぬちと体内を縦横無尽に掻き回される。それだけなのに、佐藤は腰から力が抜けそうになっていた。
処理できないほどの情報量に戸惑う。ひとりでに立つことが困難になり、思わず目の前の因幡にしがみつけば、因幡は「おっと」と佐藤を抱き締めた。
「っ、……因幡、さん……元に、戻してください……」
「駄目だよ。そんなのつまらないだろう」
「おいおい、すげーな因幡! どんな魔法使ったんだよ」
「いやこれは魔法じゃないよ。……それに僕はまだ魔法は使えない。けど、こういう機械相手は得意なんだ。一応専攻だし」
感心する伯万にあっけらかんと答える因幡。その手は佐藤の尻を揉みしだくようにその割れ目を広げ、体内では二本の指を動かし掻き回し続けている。
眉根を寄せ、違和感にも似た異物感は佐藤の腹の中で更に大きくなっていく。それに混ざって、感じたことのない感覚が込み上げてきた。
「っいなばさ、ん……っ」
震え、内壁から与えられるその甘い刺激を耐えるように全身を強張らせた佐藤。声帯が震え、その声は僅かに上擦っていた。
そんな身悶える佐藤の姿に、因幡は満足したようだ。
「はい、完成」
そう、因幡は佐藤の体内から指を抜く。
「これで僕達の下半身のサポートも出来るようになったね」
そして、先程まで佐藤の体内へと埋め込まれていた指をしゃぶり、整ったその顔に華のような笑みを浮かべた。
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