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「因幡樂、お前……っ」
「なあに万里くん。君もさっそく使いたいの?いやしん坊だなあ。ほら、いいよ。君が挿れやすいよう解してあげとこうか」
そう言って、逃れようとする佐藤の腕を引っ張り抱き寄せた因幡は頸城に見せ付けるように再び佐藤の腰を捕らえる。そのまま、見せつけるように肛門を左右に開いた。
色事やそういったことに不慣れな頸城にとってそれはあまりにも刺激が強すぎる光景だった。
頸城は慌てて己の目元を掌で覆う。そして伯万の腕から強引に佐藤を引き離した。
「余計なことすんじゃねえ……っ! つうか、人工知能相手にこんな真似して恥ずかしいと思わねえのかよ!」
――頸城万里。素は真面目だが人と接することが嫌いで、とにかく人前に出たがらない性格だという。
その代わり、動物や妖精など人間以外の生き物に優しく、とにかく可愛がるようだ。
生物学を専攻しており、その知識量は中々優秀なものだがいかんせん人嫌いなものだから教室には行かず、一日中生物室に入り浸っては生物と戯れているらしい。
これだけ聞けば三人よりかはなかなかまともなように聞こえるが、やはり頸城にも対人関係に問題があり補習に連れてこられたようだ。
乱れた呼吸を整えながらも、じっと頸城を見つめ相手を分析する佐藤。頸城もその視線に気付いたようだ。赤くなったり青くなったりしながらも、頸城は佐藤から手を離した。
「なんでこの俺がこんなやつらと一緒に補習受けなきゃいけねーんだよっ、糞! 早く出せよ、お前水先案内人なんだろ!」
「……失礼しました、頸城さん。先程からそのことについてお話させて頂こうとしていたのですが邪魔が入って逸れてしまいましたね」
「なあに? 邪魔って僕のこと?」
「そうですよ、貴方と伯万さんです」
乱れた衣類を直し、因幡と伯万を交互にじとりと睨む佐藤。しかし当の二人はどこ吹く風だ。
相手にしても無駄だと判断し、佐藤は気を取り直して説明を続ける。
「……とにかく、あなた方がこのフィールドを脱出するにはただ一つ、この世界に存在する魔王を倒すことです」
じんじんと後方と前方、二人の生徒に弄ばれた感触の残ったまま佐藤は静かに続ける。
「魔王って」と伯万が呆れたように笑う。今現在伯万たちの世界では魔王と呼ばれる存在はおらず、お伽噺のような存在だった。
「とは言っても現時点で魔王はこのフィールドに存在してません。魔王に会うためにはこのフィールドにある八つのエリアを回りそこで出される条件をクリアしてようやく魔王がいる第九のエリアが出現します」
「ますますゲームみたいじゃないですか」
「……ええ、そうですね。あくまでもここは現実世界を模倣して作ったバーチャル世界。皆様の魔力や身体能力などを全てを数値化させていただいてます。ご自分の現時点でのレベルを確認したい場合は俺に言っていただければ説明させていただこうと思います。因みに宿屋などの施設に設置されたパソコンで調べていただければ習得魔法、経験値、所持金、HPやMPの細部まで確認出来ますよ」
HPとMP。それは体力と魔力を数値化したものを通称してそう呼ぶ。
脳に刻まれた水先案内人としての台詞をマニュアル通りに読み上げる佐藤。それに対し、三十三は「へえ」と相変わらず聞いているのか聞いていないのかハッキリしない相槌を打つ。
「あ、因みに今の俺のレベルはいくつですか?」
「全員レベル1でございます」
「はははっ、ミトちん実技サボってばっかだったもんな」
「伯万さんもじゃないですか」
#三十三十月__さとみかんな__#。
いつも眠たげで、どこか飄々とした青年だ。性格こそは正反対だが、伯万とは親しい間柄のようだ。
一応ちゃんと日々の授業に出ているようだが昼間は眠り、実技の時間ではサボるが魔法の素質はあるようだ。しかし、他の生徒に悪質な悪戯したりと何度も処分を食らっては騒動を起こすという無気力な態度とは裏腹になかなかの問題児である。
「ご安心下さい。ここは実技を身に付けるための修練場。ここを出るときには皆様立派な魔導師になっていることを約束させていただきます」
「凄い自信だね、君」
佐藤の言葉に茶々をいれる因幡。そんな因幡に突っ掛かるわけでもなく佐藤は「勿論」と即答した。
そして、改めて目の前の落ちこぼれ四人組の顔をじっくりと見渡す佐藤は僅かに口角をあげた。
「……どうせ、あなた方は嫌でもレベルを上げなければならなくなりますからね」
「それって、どういう意味だよ」
佐藤の言葉に眉を潜める頸城。その疑問に対し、佐藤は「そのままの意味です」と静かに続ける。
「あなた方がこの世界に飛ばされた理由はただ一つ。魔王の討伐とは名ばかりのレベリングのためですよ」
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