冬宮

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冬宮

冬宮。 後宮で最も歴史のある宮で、水色と白がイメージされている。 冬宮はさらに13の宮に分かれている。冬の一から冬の五までは一人一つ宮を持っている。 今、私は鈴栄宮から冬宮へ向かう途中の道を歩いていた。 にしても鈴栄宮と雰囲気ががらっと変わったな。 さっきまで多種多様な花、鮮やかな模様が描かれていた道の壁はいつの間にか星や、一輪の花が凛と咲いているデザインになっていた。 この辺りからもう冬宮の雰囲気を感じる。 そんなことを思っていると前に水色の門が現れた。 あそこから冬宮なのだろう。 近くまで行き、その門を見てみるとその凄さに息を呑んだ。 青白磁色の門に金色で一匹の龍が描かれていた。 とても小さいのに上品でかつ、堂々としている。 遠くからでは見えないほど小さいのに、近くで見ると見るものを圧倒する美しさがある。素晴らしい、、 これほどの物を描けるということは相当の腕なのだろう。 私の宮にもぜひ描いてもらいたい。 「この絵は誰が?」 私がそう言うとなぜが部下達は慌て出した。 聞いたらいけない事情でもあるのだろうか。 「蝶、答えなさい。」 蝶は私が最も信頼している部下で、冷静でかつ主君には従順な子だ。物事を直球に言うからたまにびっくりしてしまうのだけど。 「御意。この冬煌門は冬宮に所属されている冬の四、陽荘架様が自分が描くと言って聞かないため急遽このデザインとなりました。」 蝶は周りの部下を気にせず淡々と答えた。 陽荘架、、 確か、陽家が治める領地は茶器や絵画などの芸術品が盛んに取引されていたわね。 私も皇族として育ったこともあり、絵画などの美術品は好きだ。 好みが合うかもしれないわね。そう思わせるほど彼の描いた龍は素晴らしかった。 まだあったこともない陽荘架に私は胸を躍らせた。 「そうなの。素晴らしいデザインだわ。蝶、陽荘架には後で褒美を遣わすよう手配しておいて。」 そう言い残して私は一足先に冬宮へと足を踏み入れた。
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