呟きシリーズ

心地良い仕返し

　「お前を振ったこと、俺、一生後悔するよ」

　頭を抱えて、溜息と一緒に貴方が吐き出した言葉。
　聞いた瞬間、すごく嬉しくて声を出して笑ってしまった。
　5年前の自分に聞かせてあげたい。
　出会ってから10年以上、ずっと好きで、でも叶わないとわかってて、それでもはっきり貴方の言葉で聞きたくて、振ってもらうために告白した、数年前の自分。
　望み通り貴方に振られて、分かっていたけど悲しくて、絶対にいつか後悔させてやると心に決めた。
　ダイエットをしたり、自分に合った服を着たり、メイクを頑張ったり、貴方が知らない間にたくさん努力した。
　久し振りに同窓会で会うと決まった時、やっと仕返しが出来ると思った。
　敢えて貴方が好きそうな服を着て、痩せた事も何も言わずに会場に行った。
　会場で貴方を見付けた時、すごくドキドキした。
　何て言われるんだろうって。
　あたしが目の前にいるのに、貴方は気が付かないからまずはそれがもう本当に嬉しくて。
　気が付いた後も、お前どうしたんだよ…って、唖然、呆然とした顔で言うから余計に嬉しくて。
　5年も経てば変わるのよ、なんて良い女ぶってみたりして、貴方の反応を楽しんだ。
　会わない内に貴方は結婚していたし、あたしを振った後に付き合った人と結ばれてたけど、そんな事は気にならなかった。
　あの時あたしを振った貴方が、今そんな顔で後悔しているとはっきり言った事が、何よりもあたしを救ったから。
　貴方に返す言葉はこれだけ。

「うん、一生後悔して？貴方があたしを振ったのよ」