おにさん

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 夏が終わり秋が来ても、ちびっこはおにさんと遊んでいた。  2歳の誕生日が近づく頃には、おにさんのことも少し話せるようになっていた。  本当に5人(5匹?)いるらしい。  見上げたり、見下ろしたりしているから背格好も色々らしい。  不可思議な存在を、こんな風に受け入れている自分のことが、不思議でならない。  このままずっと、三月まで一緒に暮らすものだと思っていた。お別れの時、何か贈ろうかと考えていたくらいだ。  別れは突然だった。  二月の始め頃。  帰宅した途端、ちびっこが言った。 「おにさん、行っちゃった」 「そうなの!?」  こくんと頷く。  私が箱を開けたり扉を開けたりしても、首を横に振るだけ。  ぎゅっと抱き締めたら、しくしくと泣き始めた。小さい子とは思えないような、悲しみを堪えた、切ない泣き方だった。  思わず、私も涙が零れてしまった。  「おにさん」が「お兄さん」なのか「鬼さん」なのか、はっきりはわからない。  ただ、その日は節分の日だった。  この子が何も知らずに豆を撒く前に家を出たのか、その他の理由があったのか。  ずっと、分からないまま。  あたたかい思い出だけ残して。                      完
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