おにさん

　引っ越しの当日、主人が自宅に引き上げると、ちびっこは私にべったりだった。

　時折、天井をじっと見上げる。

　私も一緒に見上げてみた。

　板の目が見えるだけ。

　何か模様や形に見えるのかな？　

　引っ越しで疲れていたので、すぐに休んだ。明日は日曜日。明後日から、仕事だ。

　片付けたいけれど、きっとちびっこが邪魔するだろうな。

　そう思っていたのに、日曜日のちびっこはお利口さんに一人遊び。

　なんて良い子。

　時々、きゃっきゃっと楽しそうな笑い声まで聞こえる。
　ア◯パ◯マン好きだもんな。
　衣類の片付け終わったら一回遊んであげよう、と思ってリビングを覗き込んだ。付けておいたDVDではなく、壁に向かって笑顔で手を叩いている。

　はて？

　ま、楽しそうだから良いか。

　無事、全ての片付けが終わった。
　本当に、良い子。

　数日、数ヶ月。
　忙しいけれど、穏やかに過ぎていく。

　一人遊びも相変わらず楽しそう。

　この間はかくれんぼをしていたみたい。

　少しずつ、言葉らしきものが出るようになって、呟きが聞こえる。

「どこ？どこ？」

「いた～っ！」

　ごっこ遊びかな？

「何がいたの？」

「おにさん」

「あ、いた！いち、に、さん、し、ご」

　天井を見上げて、指差して数えていた。

　え？
　もしかして、本当に何かいる？
　ちびっこには見えるの？