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マグカップを持って慌てて寝室に戻ると、少し様子がおかしい旦那様と、その胸にすがりつくちびっこ。
泣きながら私に向かってきたので、とりあえず抱き締めてあげた。
「ねぇ、奥さん。今どこにいた?」
彼が私を呼ぶ呼び方は、今のところ「奥さん」で定着している。旧姓よりはいいのかな。でも、何だかくすぐったい感じ。
友達と話していて、夫婦で互いにどう呼びあっているか話題になった時に話した。何だかくすぐったい感じ、というのも。
そしたら、「こっちが恥ずかしいわ!」と言われてしまったけど。
まあ、いいや。
外で主人が「うちの奥さんはね、・・・」と話してもなんの違和感もないし。
まあ、それは置いといて。
「キッチンで水いれてたよ。そしたら泣き声が聞こえたから慌てて戻ってきた」
「そうだよね。うーん」
ぴったり私にくっついたまま擦られ、落ち着いたのか、もうちびっこは腕の中で眠っていた。
「奥さんの腕の中ですごく気持ちよさそう。いいなぁ。」
素直な物言いも考えものだ。どきどきするではないか。
「そう言えば、さっきどうしてあんなこと聞いたの?」
「見たんだよ」
「な、な、何を?」
もしかして、この人にも見えるの!?
「あの子、奥さんをいつもみたいに追いかけて行ったんだよ。そしたら、その戸のところに白い腕が見えてあの子が通るのを遮ったんだ。それで怒って泣き出したんだよ。」
今までは遊んでくれただけだったのに。
なんでそんなことを。
「実はね。この子・・・」
そこで、ちびっこを抱き抱えたままま、この数ヶ月の不思議な出来事を初めて主人に伝えた。
話し終わり、さすがに布団に寝かせようと抱き直した時、ぱちりとちびっこが目を開けた。
そして笑顔で天井に向かって手を振り、再び眠りについてしまった。
私達はしばらく口が利けなかった。
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