おにさん

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 仕事と子育ての両立が大変だから、いっそのこと会社近くにアパートを借りてしまおうと決意した。  旦那様を自宅マンションにおいて、母一人&子一人の子連れ単身赴任(?)  家出でも、別居でもありません。  夫婦仲は至って良好。  結婚して2年。変わらず主人は優しい。  むしろ、私達二人に甘々。  だから、こんな我儘も受け入れて貰えるのかも。  寂しくて、半泣きの様子でしたが。  週末は必ず行き来している。  子連れの移動は大変だからと、車で迎えや送り。或いはこちらに主人が泊まる。   「あなたの方が大変でしょ?」  と言うと、 「優しいなあ。奥さんは」 なんて返されるので、もう言えない。  一年の辛抱だ。  先が見えるから頑張れる。  保育園の年度途中の入所が難しいから、イベント終了後も3月までは、離れて暮らす予定なのだ。  結婚して、職場まで電車で30分の距離に主人がマンションを購入してくれたのに、事業拡大のため離れた場所に幾つかの部署は移転。私の通勤時間は、1時間を越えることになってしまった。  1年の育休を経て復帰することにはしたものの、両立は無理だと思った。  主人が子供の送り迎え??  うーん。  一人で朝のお支度?  うーん。  時々でなく、毎日なんて。  だから、私は決意した。  話し合いという名の、私の一方的な宣言で子連れ単身赴任は決定した。    費用はかなりかかるけれど、ベビーシッターを頼むお金や手間ひま、時間を考えたらまあ、良いかと思えた。仕事を続けるための一時的な措置。  主人の仕事も、実は忙しい。2年間の指定を受けた研究は、この年度が2年目。研究成果のまとめの執筆に集中するなら、静かな環境が良いに決まっている。  そうして住むことになったアパート。  うちに、いるんです。  「おにさん。」
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