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* 朝、いつものように制服に着替えてラップに包まれた朝ご飯を食べる。机の上に置かれた裸の三千円を手に取って家を出る。 駅まではバスに乗るが、朝出るのが早いのもあって、人は極端に少ない。有名私立中学の制服を着た女の子と、数人のサラリーマンと一緒にバスに揺られる。 小さな駅の改札を通ってプラットホームで単語帳を開き、学校のある釘上(くぎうえ)へ向かう。金糸里(かなしり)から乗って普通列車で五駅、特急列車で三駅。たいてい二駅目の鵜月町(うづきちょう)あたりから、同じ制服の高校生が乗り合わせてくる。自分が乗っている電車に同級生が同乗することはあまりない。話したこともない他の学年の生徒と、目も合わせずに今度は電車に揺られ、釘上駅に着いたら徒歩十分で市立釘上高校に着く。 登校時間が八時二十五分なのに対して、いつも七時四十分には学校に着いている。こんなに早く来る必要はない。けれどただ、朝早くの、人の少ない静かな校舎に足を踏み入れて、まだ気温の上がりきらないうちに、人の来ないうちに学校に入るのが好きだった。
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