利益第一主義のヒロコさん

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 小学校の教師は道徳を教えることもあるでしょう。そして小学生は道徳の教えに耳を傾けることもあるでしょう。しかし、高校ともなると、教師は道徳を教えることはまずないでしょう。高校の教師は自分の保身出世の為に生徒の成績を上げることに主眼を置きますし、高校生は道徳の教えなぞ興味はなく教師が話すことに興味を持つとすれば、大学に合格する為の話、取りも直さず利益になる為の知恵に違いないですから。そうなると教師は本来、道徳を教えることが最大の役目だとすれば、仕事の為の仕事をするのではなく利益の為の仕事をすることになります。ですから薫陶の賜物なぞ授かる筈もなく利益第一主義の社会人が生まれても不思議じゃありません。寧ろ生まれるのが当然でありましょう。  現に金金の世の中になっているじゃないですか。例えば、大学に行けなかったヒロコさんは、収入を得るべくユーチューバーを目指すことになったんですが、再生回数を稼ごうと、笑顔や変顔を打算的に作ってその動画の中からサムネイルになる画像を選び出します。彼女は最初、レディースファッションを売りにしていましたから鬼も十八、番茶も出花、馬子にも衣裳とばかりに若さを頼りに色々着飾って良いように見せようとしましたが、所詮、顔の作りもスタイルもイケてなくて土台が悪いですから再生回数が伸びず、再生されても駄目だしのコメントを受けます。こうなったら露出してやれとばかりにランジェリー路線に乗り換えますと、コメントが益々酷くなって辛辣になりますし、ブスですけど何か?と開き直るような女性ですので、やけくそを起こして露出がエスカレートして到頭、コミュニティガイドラインに違反することになってチャンネル停止になってしまいました。  無理もありません。お尻を丸出しにしたんですから。人間、利益の為ならここまで堕ちるんです。しかし、これくらいは序の口です。それより堕落した淫猥な者は枚挙に暇がない程いて、これが欲しいなら三遍回ってワンと吠えてみろと言われれば、その通りにして笑われながら目当ての物を受け取る乞食のようにお金の為なら恥部だって醜態だって晒して人間としての尊厳を捨ててしまうのです。で、ヒロコさんもその一人と見た彼女の彼氏の実業家であるヒロシさんは、自分の幅広いコネを生かしてSNSで以て登録者数を増大させるなどして彼女を支援したのですが、彼女に嫌気が差して、「ヒロコ、お前は芋なんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前はダサいんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前はドラム缶なんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前はグロなんだよ」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前は糞なんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前は臭いんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、お前はサイテーなんだよ!」 「酷いじゃないの!ヒロシさん!」 「ヒロコ、そりゃあねえ、悪態をつきたくもなるよ」  ヒロシさんはユーチューブでヒロコさんの醜いお尻までも見てしまったのです。 「散々罵って別れるなんて・・・なんて冷たいの。あの人は・・・」去ってゆくヒロシさんを目送するしかないヒロコさん。自分の太陽であった筈の彼女に対し日の当たる南へ折角咲かした花を向けない木蓮のように背を向け、振り切ったヒロシさん。淡い街灯に照らされながら相合傘で霧雨の中を行き交う恋人たちが集うロマンチックな公園で。綺麗だ綺麗だと植え込みの紫陽花に嫉妬してヒロコさんは泣くのでした。  
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