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目を覚ますと白い天井が見えた。規則的な電子音が聞こえる。
目だけキョロキョロと動かすと、左腕の方に誰かが座っていた。寝ているのか、ベッドに顔をつけており、誰かわからない。
「誰?」
その人は、顔を上げ、驚いた顔で私の方を見ている。
「良かった、目を覚ました」
彼は目からボロボロと涙を溢した。
「泣かないで」
彼は声を出して泣いた。
その声を聞いたのか、看護師さんたちがやってきて部屋は賑やかになった。
色々検査をしてもらい、部屋には彼と二人きりになった。
「覚えてる?仕事し過ぎで、駅の階段で貧血になって倒れたの」
私は首を左右に振った。
「ごめん、僕が前の日もっと強く言ってれば…あの日、側にいて、どんな手を使ってでも会社に行かせなければ…こんなことにはならなかったのに。…目が覚めなかったらどうしようって思って…毎日ここに来てたんだ」
私はなんて返していいかわからなくて、頷いた。
「おかえり。帰ってきてくれてありがとう」
彼は私を抱きしめてくれた。
「…ただいま」
私も彼の背に遠慮がちに手を回した。
…結局、この人誰なんだろう。
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