うちに誰かがいます

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 最近、うちに帰ると知らない人がいる。  最初は驚いた。 「おかえり」 「…!?…あ、お疲れ様…です…?」 「驚いた?」 「あっ………はい…」  このとき変に受け入れてしまい、誰ですかって言うタイミングを完全に逃した。  それ以来毎日家に帰るとその人はいる。  その人は私より年上か同じくらいの年齢で、スーツを着た男である。  殺されるかなとか、襲われるかなとか考えたこともあったが、彼は何もせずただじっと私を見るだけだった。家事を手伝いもせず私をじっと見るだけだった。  誰ですかと聞くタイミングはいくらでもあったが、この人の悲しむ顔がなぜか頭に浮かび言うのはやめた。  というより、仕事で疲れている私は、余計な体力や時間を使いたくないのでそのままにした、の方が正しいだろう。 「おかえり」 「ただいま…です」  彼は電気も付けず体育座りでリビングにいた。これだけは毎回驚く。  私はスーツから部屋着に着替えるため洗面所に行く。彼はのそのそと立ち上がり私の後をついてくる。そして扉の外で待つのだ。  着替えが終わると、私はテーブルにパソコンを置き、仕事をしながら買ってきたコンビニ弁当を食べる。彼はそれを横でじっと見る。 「またコンビニ弁当か」  彼はたまに本当にたまに私に話しかけてくる。 「作っておいてくれてもいいんですよ」 「それは出来ないよ」 「そうですか」  部屋にはカタカタとキーボードを叩く音だけが聞こえる。  ようやく仕事が片付いたのは深夜2時を過ぎてからだった。私は軽くシャワーを浴びた。彼は洗面所の外で私が髪を乾かすまで待っていた。  私が眠気に襲われながらベッドに入ると、彼はベッドの横で体育座りをする。  朝目を開けると、彼は私の顔を覗き込んでいる。そして、決まって言うのだ。 「良かった、目を覚した」  初日は言葉の意味がわからず「何か薬でも盛ったんですか?」と聞くと、「そうじゃない」とだけ言われた。よくわからないので深く考えるのはやめた。  スーツに着替え、髪をセットする。彼は鏡越しに私を見てくる。  準備が終わり、家を出ようとすると、彼は玄関で見送りをしてくれる。 「いってらっしゃい」 「…行ってきます」  彼は少し俯き気味でボソッと嫌そうな顔で言う。  これが最近の日常となっていた。  
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