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僕たちは、大学の教室で昼ご飯を食べていた。
男3人、コンビニ弁当やら総菜パンやら、めいめい好きなものをほおばる。
僕はそうしながら、スマホでなんとなくニュースを読んでいた。
「うわ……殺人事件だって。一家全員惨殺だってさ、親も子供も」
「まじかあ、きっついなあ」
コータがすぐに反応する。
彼はいつもリアクションが大きい。共感する力が強いのかも、と僕は思う。
「犯人、夜中に家にのりこんで、わざわざ一人ひとりバラバラ死体にしてったんだって……ねえ、ユウ。ひどいよね」
「そう……だね」彼は表情を変えずに呟く。
「あいかわらず、何があっても反応薄いねえ」コータが少し、ちゃかすように言う。
「そう?」
ユウは、色が白い。瞳もすごく茶色い。
ずっと、どこか遠くを見ているような目をしている。
「だって、芸人のギャグとか見てもぜんぜん笑わないじゃん? ミルクボーイとか、死ぬほど面白いのに」とコータは、彼とは対照的な地黒の顔をユウに向ける。
「まあそれは、コータがちょっとゲラすぎんじゃないの」僕はとりもつように言う。
しかし本当に、ユウが大笑いしたり、驚いたり、感情を表に出すことは見たことがない。
感情の起伏が少ない人なんだろうか、と僕は思う。
色の白さとあいまって、彼の姿は、実際には会ったこともないロシアの人を思い起こさせる。ロシアの人は、笑わない。本当に打ち解けるまでは、感情をあまり表に出さない……
そんな時だった。
ユウが、あんなことを言い出したのは。
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