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「えっと……未来人?」
僕は困惑する。彼なりの、渾身のギャグなのだろうか?
「僕のこと、冷たい人、って思ってるでしょ。」
ユウの大きな茶色い瞳が、僕とコータのほうを向く。
「何が起きたって、僕はもうそのことを知ってるんだ。なんせ未来から、タイムスリップして来た人間だから」
「じゃあ、あの殺人事件も、芸人のギャグも?」僕は聞き返す。
「うん、知ってる。だからもう、リアクションとか取れないんだ。それだけ」
そんなおかしなことを言われたって、僕もどうしていいか分からない。
無意識に助けでも求めようとしたのか、僕はコータのほうを見た。
そういえば、いつもオーバーリアクションな彼の声が聞こえてこない。こんな時、まっさきに何か言ってくれそうなものなのに。
見ると、コータは下を向いている。黒々と茂った濃い髪の毛に隠れて、彼の表情は分からない。
「ユウが言ってくれたから、俺も初めて打ち明けるけど……」
口からもれるコータの低い声は、何とか聴きとれる音量だ。
「俺、過去から来た人間なんだ」
ねえ何なの、この展開。僕には、2人を交互に見つめるしかなかった。
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