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「でもいいよねー過去から来た人ってさ」
ユウは頬杖をつきながら、コータを見る。
「何でも知っちゃってる僕と違って、何にでも感動できるんでしょ?」
「まあそれが過去から来る醍醐味だからね! スマホとかネットとか、便利すぎて涙ちょちょぎれるわ。エンタメも超おもろいし」
「でも逆に」コータは続ける。
「未来から来た人って、今後の株の値動きとか知っているし、お金には絶対困らないよね」
「まーね。一応そうやって不自由ないようには稼いでるけど」ユウは軽くうなずく。
「うそ! じゃあユウって金持ちなの? 一生お金に困ることないの?」
将来に不安な僕は、思わずそこに食いついてしまう。
卒業後にバリバリ社会で稼いで生き抜いていく自信なんて、正直僕にはないから。
「株とかの情報を人に教えることは、決まりで固く禁じられてるから。何か期待させたならゴメン」
「それにしても……未来からやって来るのがこんなに退屈とは思わなかったわ」
そんなアンニュイ感あふれるユウに、僕は言う。
「そうかな、未来からでも過去からでも、そうやってタイムトラベルとかできるの、結構あこがれるけど」
そんな僕の言葉に、ユウは頬杖から顔を起こした。
「本当に?」
「う、うん……」
ユウの透き通った瞳で見つめられると、同性だというのになんだかどぎまぎしてしまう。
「本当に、本当?」
「そ、そうだね、だって未来から来たって過去から来たって、それぞれ現代人にはないメリットがあるじゃん……」
「わかった、じゃあどっちかを選んで。僕みたいに未来から過去へ行きたいか、コータみたいに過去から未来に行きたいか。」
「え?」
「どっちか選んだほうの能力を、使えるように教えてあげる。コータ、いいよね?」
「おう、いいよ」とコータも応じる。
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