白河財閥の王子様

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ドラマみたいな話をドキドキしながら聞いていた。 なんて答えるのだろうと壱都さんの返事を待っていたのは私だけじゃない。 その場にいた全員が彼の返事を待っていた。 それなのに壱都さんは柔らかく微笑むだけで、返事はしなかった。 無言のお断りだと私は察したけど、芙由江さんも紗耶香さんも諦めきれないようだった。 それにしても、微笑みだけで人を黙らせることができるなんて。 これは―――なかなかの手練(てだ)れ。 芙由江さんがまだなにか話をしたそうにしていたけれど、壱都さんはそれを遮り、思い出したかのように言った。 「ああ、そうだ。井垣会長の部屋にハンカチを忘れてきてしまったみたいだから、とってきてもらえるかな?」 壱都さんが私の方を見ていたので、私に頼んでいるような形になってしまった。 「わかりました」 すぐそこなんだから、自分で取りに行けばいいのにと思わずにいられなかったけど、仕方ない。 相手は白河財閥のお坊っちゃんで断って波風をたてたくなかった。 お祖父さんの部屋にノックをし、中に入った。 「どうした?」 「壱都さんがハンカチを忘れたそうなんです」 「テーブルの上だろう」
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