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雪が降る寒い日、私は父に引き取られた―――
私に父がいたと知ったのは母の葬式の日だった。
母の友人がどこから連絡をとったのか、私の父だと名乗る人がやってきて、名刺を見せた。
「子供ができていたとは知らなかった。こちらの社会的な立場もある。面倒は見てやるが、それ以上は期待しないでくれ」
私は父のその言葉に自分が歓迎されない子であることを悟った。
そして、父の子として引き取られるのではなく、厄介者として扱われることも。
「はい……」
「ものわかりが良くて助かる」
ものわかりがいいのではない。
期待してないだけだった。
いつも過剰に期待はしないようにしている。
母は私を育てるのに忙しくて、学校の行事は一度もきてくれなかったし、アパートに帰っても一人。
今も私は一人。
母が亡くなるまで、いたことすら知らなかった父を父とは思えず、ほとんど他人のような存在でしかない。
「妻と娘がいる。わきまえて接してくれよ」
誰も庇ってくれる人はなく、言われるがままに私は静かにうなずいた。
少ない荷物をまとめ、父に連れられてやってきたのは大きなお屋敷だった。
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