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私が井垣の家に引き取られ、しばらくした頃、私も段々家の内情がわかって来た。
お祖父さんには父も敵わないらしく、お伺いをたててから、なんでもやるようにしているようだった。
仕事の話だろうけど、『これでいいですか』『あれはどうですか』と、ずっと話しかけているのでお祖父さんが疲れてしまわないか心配だった。
そして、芙由江さんは金遣いが荒いらしく、よくお祖父さんにお金の無心に来ていた。
宝石やブランドバッグ、洋服にお金を使っているらしい。
紗耶香さんも同じでお金がなくなるとお祖父さんのところにやってくる。
確かにこれじゃ、人間不信にもなる。
「なにか欲しいものはないか」
お祖父さんは私に気遣ってか、そう声をかけてくれたけど、欲しいものはない。
必要なものを買えるだけのお金だけいただいている。
それで十分だった。
「ありませんよ」
「欲のないことだ」
私が本当に欲しいものは手に入らない。
井垣の家に引き取られ、クリスマスが終わり、お正月が過ぎた。
賑やかな父の家族団欒の様子を遠巻きに眺めていた。
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