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「それにしても、結婚式までに片付いてよかったこと」
「そうですね。私も迷いましたけど―――」
お祖父さんの遺言が認められて、遺言書は有効となり、遺言通りになった。
いくらか現金を相続した父達だけど、警察に捕まった紗耶香さんは保釈金を支払い、父はアルコール依存症のため入院、芙由江さんは浪費癖が治らず、ため込んだ借金でお金は全部なくなってしまったと聞いた。
当然、井垣の家に三人は住むことはできなくなり、今は芙由江さんの実家にお世話になっているらしい。
「井垣の家にやっと戻られてよかった」
「お屋敷の灯が消えたままだと、寂しいですからね」
「きっとお祖父様もお喜びですよ」
「そうだといいんですけど」
「こんなにいい天気になったんですよ。きっと祝福していますよ」
朝まで雨が降っていたのに式の前になると、不思議と雨が止んだ。
窓の外は天気がよく、白い窓枠からは風で緑の木々が揺れているのが見えた。
「そろそろ、お式が始まりますね。私達は席に座りましょうか」
先生達はまるで女学生のようだった。
イキイキとして、楽しそうにお喋りをしながら、控室から出て行った。
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