白河財閥の王子様

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町子さん達も心なしかそわそわしている。 本物の王子様ってわけではなさそうだけど。 とりあえず、今は王子様よりオーブンの中のマフィンだ。 板チョコを手で割って、生地にいれただけの簡単なマフィン。 でも、お菓子を作るとお祖父さんがおいしいと言って食べてくれるので、時間がある時はお菓子を作るようにしている。 簡単なお菓子しか作れないけど…… 「お祖父さんにおやつを持って行きますね」 「カップケーキだね」 「マフィンです」 「そう。それそれ」 町子さんとは同じやり取りを何度かしていた。 焼き上がると甘い匂いがしてきて、つまみ食いしてしまいそうになるけど、それを耐えて、棚から手動のコーヒーミルを取り出した。 ガリガリと豆を挽く。 お祖父さんはコーヒーが好きなのではと最近、気づいた。 台所にコーヒーをいれる道具が(そろ)っていたから、そうじゃないかなと思っていた。 豆は学校の帰り道、コーヒー豆専門店でお薦めのを買ってきた。 さすがにコーヒー豆の好みまではわからない。 お祖父さんが気に入っている有田焼のコーヒーカップを用意して、隣にチョコが入ったマフィンを皿にのせて、おしぼりをつける。
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