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明らかに面倒をかけてるのはあなた達なんですがと、ツッコミをいれたいくらいだった。
ご厄介になってる身としては父に偉そうに言えないけど、井垣家の内情はしっかり理解できた。
「まあ、いいだろう。わしが生きていられるのも長くて後二、三年だ。」
「そんなこと言わないで長生きしてください」
「ふん」
いてほしいって素直に言えばいいのに。
素直じゃないんだから。
そう思っていると、玄関の方がザワザワとして、騒がしくなった。
この奥の部屋にまで聞こえてくるなんて、なにがあったんだろうか。
お祖父さんの顔を見ると目を細めて笑っていた。
「来たか」
「誰が来たんですか?」
「悪い男だ。気を付けろ。わしの若い時には及ばないが、なかなかの男前だからな」
自分で言う?
仕事関係の人なのかもしれない。
それとも、町子さんが言っていた王子様だろうか。
廊下を歩く音がして、部屋の前で止まる。
「井垣会長。白河壱都です。ご挨拶に参りました」
「入れ」
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