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襖戸が開き、入ってきたのはスーツ姿の若い男性だった。
それも私が今まで見た男の人の中で一番、綺麗な顔をしている。
茶色の髪はサラサラとしていて、中性的で整った顔立ち、長い睫毛に穏やかで落ち着いている雰囲気。
それに加え、上品な立ち振る舞いが身に付いていて、椅子に座るだけでも普通の人とどこか違っていた。
確かに王子様と呼んでしまいたくなるのも納得だった。
「お元気そうですね」
「ふん。こんな姿で元気なわけないだろうが。お前の祖父に似て嫌味がうまいな」
「お褒め頂き、光栄です」
お祖父さんと話をして、怯まない人を初めて見た。
今までお祖父さんの元へやってきた人達はお祖父さんに遠慮して冗談のひとつも言えなかった。
それがこの王子様は違っていた。
「朱加里」
「は、はい」
気後れしてしまっている私にお祖父さんは淡々とした口調で言った。
「こいつは白河壱都という。白河財閥の末っ子だ」
なんと答えていいかわからず、軽く会釈した。
私と目があうと、壱都さんはにこりと微笑んだ。
たったそれだけなのにドキッとして、慌てて目をそらした。
お祖父さんから気を付けろと言われた意味がわかる。
この人は自分の魅力を理解している人だ。
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