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「私のコーヒーとマフィンはどうでしたか?壱都さんが来るって聞いて、私が心を込めて壱都さんのために作ったお菓子なんです」
私と町子さんは呆れた顔で沙耶香さんを見た。
お菓子作りをしている紗耶香さんなんて、一度も見たことがない。
沙耶香さんは壱都さんに自分をアピールをしようと必死だった。
「壱都さん。今度はいつ、井垣の家にいらっしゃるの?」
甘えるようにして、沙耶香さんは帰ろうとしている壱都さんの腕に絡みついた。
いい返事をするまでは逃がさないというように。
けれど、相手はもっと上手だった。
するりと腕を抜き、紗耶香さんから体を離す。
慣れてるなあ。
きっとすごくモテるに違いない。
あんな可愛い沙耶香さんから、上目遣いでお願いされても少しも動じることがなかった。
「しばらくは来れないかな。今日、伺ったのは海外支店に異動が決まったからなんだ。出発前に白河の祖父から、井垣の家に顔をだしてこいって、言われてね」
「なかなか会えなくなるなんてショックだわ。でも、向こうに遊びに行ったら案内して下さるわよね?」
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