白河財閥の王子様

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「今のは何?」 婚約者、結婚って? 誰が誰と? 触れた唇の感触がまだ残っていた。 私のファーストキスだったのにあっさり奪われてしまった。 それだけじゃない。 爽やかそうに見えるのはうわべだけ。 とんでもない人だ。 計算づくめで腹黒い。 人をうまく扱って、それこそ操り人形かなにかくらいに思っているに違いない。 あんな人と結婚なんて冗談じゃない。 きっと決めたのはお祖父さんだ。 断ってやる!と決めて、お祖父さんの部屋に向かった。 「お祖父さん!」 「話したか」 お祖父さんは私と壱都さんが話をしたことはわかっていたようだった。 きっとハンカチを持って行った時点で気づいていたのだろう。 「婚約って、いえ、結婚ってどういうことですか」 お祖父さんは話す前にちらっと襖戸を見た。 聞かれたくないと思っていることに気づき、私は戸を閉めた。 完全に戸を閉めるとお祖父さんは低く小さい声で話をした。 「わしが死んだ後、お前が一人になる」 その言葉に私はさっきまでの勢いが消えた。 「そんなことは……」 ないですとは言えなかった。 私を使用人くらいにしか思ってない父達の存在。
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