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一般の家よりずっと広いリビングには外国のような暖炉と天井にはシャンデリア、壁には絵画が飾られていた。
「ふぅん、あなたがそうなの」
「悪いな。芙由江。引き取ることになってしまって」
「いいのよ。ちょうど使用人が一人辞めていなかったから」
父と話していた女性―――芙由江さんは私を蔑んだような目でみると、くすりと笑った。
宝石がついたネックレス、指輪、大きな花柄のワンピースに毒々しい赤の口紅。
濃い化粧や着飾ることが好きではなかった私の母と正反対のタイプで、私を見て地味な娘だとでも思ったのだろう。
「お母様。そこそこ綺麗な顔でよかったわね。使用人とはいえ、私の姉にあたる人間があまりみっともなくても嫌じゃない?」
「あら、そうね」
私はまったく笑えなかったけれど、笑い声が響いた。
そこには私を除いた家族団らんの姿があった。
私の父もその家族の中に含まれていて、私は暖炉を囲む家族を一番遠くから眺めているような―――そんな存在だった。
「これから、よろしくね。お姉様」
「紗耶香。お姉様なんて呼ぶのはやめてちょうだい。愛人の子よ」
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