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長男の克麻、次男の直将、で、俺。
末っ子なのに壱都とはどういうことだよ、と思うが、両親は女の子を望んでいたらしい。
三人も男がいると、末っ子の扱いなんて雑なものだ。
気楽でいい部分もあるが、いろいろと損だ。
兄達より大学を卒業するのが遅れたせいで、スタートダッシュから出遅れているようなものだった。
それが、正直ずっと面白くなかった。
「生まれて初めて末っ子でよかったと思えたな」
「婚約者の方がそんなに気に入りましたか」
「そうだね。少なくとも相手が井垣というのも面白い」
「犬猿の中で今までお互い距離をとってきたというのに井垣会長も孫娘を壱都さんに差し出すなんて、どういうことなんですかね。息子の愛人の子だから、白河にでも嫁がせようというわけではありませんよね?」
「樫村。口を慎め。俺の婚約者だぞ」
「……っと、申し訳ありません」
「そうじゃない。会長は本妻の孫娘より大事にしている」
「そうなんですか?けど、過ごした時間は短いでしょう」
「過ごす時間が短くても一生忘れられないこともある」
樫村は井垣会長が長くないと俺の言葉で悟ったようだった。
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