婚約者【壱都】

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こちらを見る目は鋭く、威圧感がある。 この重苦しい空気より、井垣会長の厳しくも温かい人柄のほうが百倍もいいに決まっている。 だいたいこの会食も魔王の元に集められた配下のような雰囲気だった。 白河財閥の会長である祖父が主催する月一回の夕食会。 これは家族全員参加を強制的に義務付けられている。 白河家で参加しない人間はいない。 「それでどうだった。井垣は」 「思ったより、お元気そうでしたよ」 「そうか」 祖父のおつかいで遅刻したのだとわかると、心なしか全員がホッとしていた。 どれだけ、祖父がいまだに白河家で力があるかわかる―――化け物か。 一番端のいつもの席に座った。 食事はフレンチで洋食好きな祖父は分厚いステーキに添えたテリーヌを美味しそうに食べている。 毒殺しても死にそうにないな。 白河の祖父は。 「井垣会長はあと三年生きられたら、いいほうだと言っていました」 ぴたりと祖父のフォークが止まった。 「……そうか」 祖父と井垣会長は仲が悪いと思っていたが、人生も終わりになってくると、違うようだ。
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