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お互いに気に掛けているところを見ると、本当に仲が悪かったわけじゃないのかもしれない。
理由があって、疎遠になっていた。
そういうことだろう。
食事も一通り終わると、デザートと食後の飲み物が出てくる。
そこで、ようやく祖父以外の家族が話し始めた。
「壱都。海外支店に行っても頑張れよ」
「勉強になるぞ。よかったな」
兄二人は俺にそう言ったが、海外支店に異動させたのは間違いなく、この二人だ。
俺を本社から追い出し、遠ざけることで社長の椅子を奪われないようにしている。
激励の言葉がわざとらしい。
「ありがとう、兄さん。頑張ってくるよ」
心中を隠すのは兄より得意かもしれない。
「壱都が海外だなんて、心配だわ」
母にとって、末の息子はいつまでたっても小さいままのようで俺の海外行きを最後まで反対していた。
危ないという理由で。
俺をいくつだと思っているのだろうか。
「平気ですよ。秘書の樫村も一緒に行きますから」
「そう?なにかあったら、連絡するのよ」
隣の父が笑った。
「お前が思うより、壱都はしっかりしている。大丈夫だ。あれでなかなか強かだ」
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