婚約者【壱都】

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「はぁ。珍しいですね。女性関係でそんなに慌てる壱都さんを見るのは。仕事に影響が出ると困るので、早急に調べますが……」 うるさい。 お前に俺の気持ちがわかってたまるか。 ホテルの朝食を食べにレストランに行くとテラス席に案内された。 白のテーブルクロスの上に朝食の用意がされてある。 焼きたてのパンにイチゴジャム、プラムジャム、ブルーベリージャム、チェリージャムなど、豊富なジャム類の他にチーズ、新鮮な野菜がたっぷり出されたグリーンサラダ、ジャガイモとクレソンのサラダも美味しい。 「野菜が新鮮で美味しいな。いつか彼女もここに―――」 ふっとさっきのメールが頭をよぎり、なぜかクレソンが苦く感じた。 俺を婚約者だとわかっているよな? まさか、形だけの婚約者だと思われているとか? フランス語の新聞を読もうと手にしていたが、内容がまったく頭に入ってこなかった。 「壱都さん。日程がわかりましたよ」 朝食が終わるという頃に樫村がやってきて、メモ紙を渡してくれた。 「ありがとう。樫村」 俺は彼女の留学日程を難なく手に入れ、悪い顔をした。 メールの仕返しをしようと思っていた。
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