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初対面だというのに言葉にはまったく遠慮というものがない。
私は言い返せずに制服のスカートをぎゅっと握りしめた。
思っていた以上に冷たかった。
母が死に身寄りのない私をお金持ちの父が迎えにくるというドラマのような展開に胸を踊らせたわけではないけれど……
一人ではないことが少しだけ嬉しくて、胸のうちのどこかで期待しないと決めていたくせに血の繋がりに期待していたのだろう。
歓迎されるわけがない。
私は母が勝手に子供を産んで育てていた子。
「私のことは奥様、もしくは芙由江さんと呼んでちょうだい。それで、あなたの名前はなんていうのかしら?」
私の身なりを確認して満足したのか、芙由江さんはハイブランドしか載っていないファッション雑誌から目を離さず、紅茶を口にして言った。
「朱加里です」
「そう。あなたを引き取ってあげたけど、まさか私の娘と同じように暮らせるとは思ってないわよね?」
「はい……」
父は私がなにを言われようと庇う気はないらしく、知らん顔をしていた。
愛情があって引き取ったというよりは世間体を気にして引き取っただけなのだろう。
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