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スーツに乱れがないかチェックし、待っていると夫妻はやってきた。
「いやぁ、まさか井垣グループと白河財閥が手を結ぶなんてこと考えてもみなかったですよ」
海外支店長は陽気な男で話しやすい人柄だった。
おかげで扱いやすく、なにを考えているのか、手に取るように理解できた。
「こちらこそ、支店長のおかげで楽しい取引ができました」
ワインを試飲し、満足したのは支店長だけではなかった。
「すばらしいワインですね。ぶどうだけでなく、他のフルーツの香りがするような甘いワインでした」
支店長も自分の妻が気に入ったのならと思ったらしく、契約書にサラサラとサインをした。
井垣グループが弱いのは海外での食品取引だった。
昔から、ワイナリーの主人達と友人のような付き合いをしてきた白河財閥のコネクションは魅力だったらしく、俺が少しワイナリーの話をするとすぐにのってきた。
「こちらの白ワインもいい。辛口だが、爽やかで花のような香りがある」
「気に入っていただけて、よかった」
「いやいや!さすが白河財閥のご子息。舌も目も肥えていらっしゃる。頼んで正解だった。またお願いしますよ!」
「こちらこそ」
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