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「おこづかいちょうだいって言ってもくれないし。本当にケチなんだから。すぐに怒るし、すごく怖いのよ。お祖父様の面倒をみるなんて可哀想。殴られないように気を付けてね」
「町子さん!お祖父様の所にこの子を連れて行って!」
年配のお手伝いさんが奥から現れて、深々と頭を下げ、私の手を掴んだ。
「さ、お早く」
リビングから私を連れ出すと、町子さんはやれやれとため息をついた。
「可哀想にね。母親を亡くしたあげくに年寄りの世話をさせるために引き取って。これじゃあ、まるで使用人同然だよ」
「行くあてがなかったので、助かりました」
「そうだけどねぇ……。こう言っちゃなんだけど、奥様もお嬢様も親切とは縁遠い方だよ。大旦那様が病気になる前はおべっかばかり使っていたのに今じゃ部屋にも寄り付かないし」
「そうなんですか。お祖父さんは寂しいでしょうね」
話を合わせるのにそう答えた。
町子さんはしゃべりすぎたと思ったのか、それ以上なにも言わなかった。
どこまで続いてるのか、長い廊下を歩いていた。
旅館みたいに広い家はどこもかしこもピカピカでホコリ一つない。
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