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投げつけたのか、本が床に散らばっていた。
「……もう住むところもありませんから」
「ここよりマシだろう」
自分の家なのにお祖父さんはそんなことを言った。
それが悲しかった。
床に落ちた物を片付けていると、お祖父さんがベッドから身を乗り出した。
「何をしている」
「散らかっているので」
「なるほど。死にかけたジジイの世話でも頼まれたか。貧乏クジもいいところだな」
自分で死にかけというあたり、まだまだ元気だと思う。
本当に死にかけている人はそんな風には言えない。
「これから、よろしくお願いします」
「……さっさと出て行け」
他の人達に会った後だから、ぶっきらぼうな言い方にも傷つくことはなかった。
お祖父さんは私のことを嫌いだから、出て行けと言っているわけじゃない。
私がこの家にいても幸せになれないことをわかっていて、出て行けと言ってくれているのだ。
きっと父に言えば、安いアパートを借りるくらいのことはしてくれたかもしれない。
けれど―――
「ありがとうございます」
「なんのお礼だ?おかしな奴だな」
誰も私の心配してくれる人なんていないと思っていた。
でも、いた。
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