モリアさんは

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モリアさんは

「はぁはぁはぁ……」 「ココマデ来レバ安心」 ぱっと離される手に寂しさを覚える。 「あの――お店は…牛乳屋さんはどうなるんでしょう?」 「オーナーカラ前ニ聞イタ事アルヨ。摘発来タラオ店終ワリダッテ。ゴハンドウシヨウ……」 こんな時でもごはんだ。 モリアさんの言うごはんとは多分精液(ミルク)の事だ。 これからもずっとあんな風に沢山の人のミルクを飲むのかな。 もしかしたら恋人作ってその人のミルクを飲むのかな。 ―――恋人にはもしかしたら笑いかけたり…するのかな。 牛乳屋さんという場所を失い、あの行為が途端に乳しぼりから性的な意味に思えた。 黒く嫌な想いが胸の中に渦巻く。 俺だってミルクぐらい出せる…。 「俺のじゃ……ダメですか?」 「ミカサノ?」 「はい。俺のミルク…じゃダメですか?恋人、になれば毎日……俺のミルク飲ませて、あげます、から――っ!」 我ながら何言ってるんだって思う。必死過ぎて笑う。 こんな素敵な人が俺なんかを相手にするはずなんかないのに。 さっきのだって俺の勘違いだし―――。 「ソレハ考エタ事ナカッタ」 モリアさんの言葉にギュッと心臓が痛くなる。 「ミカサガイイナラ僕ハ―――。デモ多分キミは食事ニハナラナイ、ト思ウ」 「え?どういう意味…」 あっと思った時にはモリアさんの唇が俺の唇に重なって、その舌が俺の口の中を弄った。 「は…う…んん」 まるで意思を持った生き物のように蠢き絡む舌と舌。 それだけでメロメロで腰砕けになってしまう。 モリアさんの真っ白な肌もうっすらと赤く色づいていて、その瞳の奥に熱が見えた。 気持ちい………。 どのくらい貪り合ったのか唇が離れてじんじんとした痺れだけが残る。 「やはり」 モリアさんの呟きだった。 何がやはりなのだろうか? やはり俺ではダメだった? やはり食事にはならない? 「やはり」と言ったっきり黙り込むモリアさんの表情の変化に俺の心は暗く沈みこんだ。 ――――って、あれ?表情の? 急いでモリアさんを見ると目が合い、にっこりと微笑まれた。 え?え?ええ??? 破壊力!! 「モリアさん…?」 「どうしたの?」 「だって笑って―――」 それに何だかしゃべり方も普通の人間みたいな…。 「ああ、みかさとキスをしたからね」 「キス…」 そっと自分の唇に触れてみる。 これはキスでいいんだ。モリアさんにとってもこれはキスだったんだ。 食事じゃなくてキス。 ふふふ、と嬉しそうに微笑むとモリアさんも俺の事を愛おしそうに見て微笑んだ。
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