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食事から
「みかさ、聞いて?信じられないかもしれないけど、僕は宇宙人なんだ。キスは愛情の証。僕たちはキスを交わして愛を誓う。キスした事で僕の感情はみかさと繋がった。みかさが嬉しいと僕も嬉しいし、悲しいと僕も悲しい。これはお互いに相手の事を好きじゃないと起こらない現象なんだ。みかさと繋がれて僕はすごく嬉しい」
宇宙人…。モリアさんに感じた違和感はだからなのか。
「みかさは僕を受け入れてくれる?僕は最初から無理だと思ってた。だから『考エタコトナカッタ』。僕たちは誰かと情交を結ぶと他の誰のミルクも受け付けなくなってしまう。僕はミルクでしか栄養を取る事が出来ない。だから僕は特定の相手を作る事をしなかった」
モリアさんの話にびっくりはしたけど妙に納得してしまった。
モリアさんは切ない表情をして少しだけ屈んで俺の顔を覗き込んだ。
「まだ今なら―――みかさは逃げられる。これ以上の事をしてしまえば僕たちは……地球人たちが言うところの『結婚』をしてしまうんだ。そうなってしまえばみかさも僕と同じように僕のミルクからしか栄養を取れなくなってしまう。勿論今まで通り地球の食べ物を食べる事はできる。だけど、栄養は一切取れない。僕との結婚でまったく違う生き物へと身体の構造が変わってしまうんだ。だから―――」
「モリアさん、逃げろなんて言わないで下さいね?」
「だけど――」
「そりゃあびっくりしましたけど、そうなったら俺はモリアさんの事独り占めできるって事ですよね?モリアさんには俺だけになる。俺にもモリアさんだけになる。これってすっごい事ですよ?モリアさんみたいな素敵な人が俺だけの物になるなんて、考えただけで嬉しくてうれしくて、興奮する!」
「―――キミってやつは…」
そう言って俯くモリアさんの瞳にはきらりと光る物が見えた。
俺はそっとそれを指で拭ってその指をペロリと舐めた。
「しょっぱいや。ほら、俺たちは同じです。宇宙人とか地球人とか関係ないです。俺はモリアさんの事が好きです。不束者ですがどうぞ末永くよろしくお願いします」
「―――こんな僕ですが、どうぞお嫁に来て下さい。一生大事にします。初めて会った時からみかさをすごくすごく甘やかしたいって思ってたんだ。嬉しい……」
モリアさんの瞳に溜まった涙が笑顔になる事でぽろりと零れていく。
俺たちは永遠の愛を誓うように夜空を照らす月を証人に口づけを交わした。
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