居酒屋

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桜井百合、21 青井美空、19 金城光、21 白田雪、18 赤木林檎、19 「握手会に並ぶ人って、いっつもだいたい同じファンの人達だからスーツ姿の幸さんは凄く新鮮でした」 「そうだよね~。場所変わっても同じファンってちょっとショックだから……。ありがたいんだけど、同じ人か~ってなっちゃうよね」 「ネットにアップしてる写真のファンずっと一緒だから背景加工しないと同じ日の同じ場所なの? ってなっちゃう……」 「でも、一途にずっと来てくれる人ってホントありがたい。前まで私推しだったのに違う子のところに行かれると凄いショック……」 「女性ファンがついてくれると凄く嬉しい」 「私、女性ファンほとんどいませんよぉ~」 皆、それぞれの地下アイドルあるあるを言った。アイドル同士なら、他の人が言った事は自分にも経験があるようで、不満をぶつけ合う。正は既に会話についていけていない。誰が何を言ったのか覚える事が出来ていないのだが、基本、皆同じ不満なのでそれほど問題無いだろう。そこに店員が料理を持って来る。 「お待たせしました。シーザーサラダとサーモンのカルパッチョと唐揚げセットです」 店員が料理を机に置いた後、その場を去ると、正は皆に趣味を聞いた。 「私、最近ボルダリングに嵌まってるんですぅ」 林檎が1番に発言した。 「ボルダリング人気だよね? 私の友達もやってる。ストレス解消になるって」 百合は少し知識があるようだ。正は名前を聞いた事がある程度だ。 「ボルダリングって何ですか?」 雪は不思議そうに質問した。 「知らない? 今人気だよ。壁に人工の岩みたいなのがついててそれを登っていくの」 「あ~! あれ、ボルダリングって言うんですね」 「そうそう、オリンピック競技にもなるみたいだし」 「面白そうですね」 「うんうん。今度皆で行こうよ。林檎ちゃんに指導してもらおう」 「良いですよぅ」 少し会話が途絶えた時、美空が話し出す。 「私は SNS にアイドル活動をアップするのが趣味なんです。自分のアイドル活動をアップして小遣い稼ぎしています」 「凄く良いじゃないか! パソコンに詳しいって事?」 正は自分の苦手分野を詳しいと言う美空に食いついた。 「小さい頃からパソコンとにらめっこでしたから。CG クリエイターの資格も持っています」 「凄いねえ。このグループの広報担当に任命しようかな。そういえば青山の『水田神社将棋倒し事件』って知ってる?」 「もちろんです。当日、鳥居から生で見ていました。恐いですよね、近くで事件があると」 「えっ! 現場にいたの?!」 「はい、友人が見学したいっていうので第4回のイベントを無理やり観戦させられました。少し話題になった第2回から知ってます。まあ、参加はしないですけどね」 「あれって第4回を書き込んだ人が分からないんだよね? 専門家でも分からない?」 「そうですねぇ……。分かりにくくする方法は色々あります。でも、専門家なら分かると思いますよ。あっ! 海外のサーバーを使われたら調べるのが困難になるかも。通信記録を残す義務のない国から送れば分からないかも知れません」 「そういうもんなんだねぇ。あっ、ごめん、アイドルにこんな話して」 「『1万円争奪レース』って兵庫県の福男レースみたいなものなんですか?」 アイドルっぽくない低音ボイスで光が発言した。 「神社で行なうし、似てると言えば似てるよね。『1万円争奪レース』の主催者は福男レースを真似て開催したのかも知れないな」 「それなら安全面も真似して欲しかったです」 「福男レースは安全なんですか?」 美空の指摘に雪が質問した。 「もちろん転倒して怪我する事もあるけど、100人ずつ区切って行なうから随分安全面に考慮してると思うよ。警備員もいるはずだし」 光は福男レースに詳しいようだ。 「それに、あの細くて急な大階段を一斉に下らせるなんて酷すぎるわ!」 美空は生で将棋倒しの事故を見ているので、かなり怒っている。 「1万円争奪ってのもどうなんですかね? 福男レースは名誉だけなんでしょ?」 雪は美空に便乗しているのか、1万円争奪レースの批判をしだした。 「いや、実は福男レースの方が商品は豪華なんだ」 「えっ?!」 「賞金は無いんだけど、米やビール、ほかにも色々あって1万円どころじゃないんだ」 「幸さん、随分詳しいですね」 光は自分の知識よりも正が詳しいので反応した。 「ああ、10年程前に朝のニュース番組のワンコーナーで取り上げられてたのを見たんだ」 「そうなんですね」 「福男レースは最初の抽選で100番までに入らないと絶対に福男にはなれないんだ。短距離の金メダリストでもね」 皆は正の話に聞き入っている。 「101番以降がスタートする頃には福男が決まっちゃってるから。それで、そのニュース番組は抽選で一番をとった人が福男になれるかをドキュメントで伝えてたんだ」 「どうだったんですかぁ?」
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