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福男
「抽選で1番をとった男性は消防士だったんだ」
「体を鍛えているから、大チャンスですね」
「そうなんだ。で、その人にインタビューしてると後ろから消防士の先輩が話に入って来たんだ。話を聞くと先輩は一昨年の福男だったんだよ」
「凄い偶然ですね」
「そう。で、今回はって聞くと抽選でギリギリの100番だと言うんだ。同時スタートだから可能性が無い訳じゃないけど、1番後ろの列なんで絶望的だよね? だから、先輩は自分が無理だから後輩に是非とも3番福で良いから取らしてあげたいって言ってたんだ」
「3番福?」
「ああ、俺もその時まで知らなかったんだけど、1番だけが福男じゃなく3番までがその年の福男になるみたいなんだ。1番福、2番福、3番福って感じでね。3番福まで豪華商品が貰えるんだ」
「へぇ~、知らなかったです」
「でも、良い話ですね。抽選で1番だった後輩ちゃんは福男になれたんですか?」
「俺も良い話だから後輩を応援してたんだ。スタートすると野球のユニフォームを着た男性が圧倒的に速くて、1番福は決定だなって感じだった。で、後輩はというと2番手につけたんだ」
「後輩ちゃん頑張って~」
「でも、1つ目のカーブを曲がった後、1人に抜かれてしまうんだ」
「ええ~」
「でもその後は何とか耐えて、最終カーブを曲がっても3番目だったんだ」
「それで、それで?」
「福男レースのゴールは、3人の神主に抱きつくのが早い順から決定するんだ。1着と2着が神主に抱きついたんだけど、後輩は2着の人が抱きついた神主を目指していたんだ。だから、違う神主を目指す為に一瞬遅れて、その隙に違う人が抱きついちゃったんだ」
「ええ~、可哀想」
「でも、しょうがないよね」
「うんうん。皆必死だもん」
「さらにビックリすることに、その3番福を取った男性は先輩消防士だったんだ!」
「ええ~!!」
「良い話だと思ってたのに……酷いですね!」
「俺もその時は酷い話だなと思ったんだけど、よくよく考えると追い抜いたのが後輩って分からなかったかもしれないし、3番福の商品も良いし、仕方ないかなって」
「そういうもんなんですかねぇ」
「でも、アイドルグループにも言える事だけど、チーム内だからって競争もありますしね。プロを目指すんだから。だからと言って仲が悪くなるほど潰しあいはダメですけど」
百合がまとめた。さすがは最年長で、前のグループでもリーダーを務めていただけの事はある。
「切磋琢磨できればいいね。そうなるとメンバーって何人ぐらいが理想なのかな? 取り敢えずこの5人が初期メンバーになるんだけど、増員も考えないとね」
「私、3つ下に妹がいるんですよ。私より美人なんで、もしよかったらプロデュースしてあげてください」
雪が妹アピールをした。
「そうなんだ。まだ中学生?」
「はい、中3です」
「卒業してアイドル目指すなら教えて」
「はい。幸さんは兄弟とかいるんですか?」
「ああ、俺と違って凄く出来の良い兄貴がいるよ。ハンサムで頭が良くて運動神経抜群でスタイルが良くて……」
「そんな人いるんですか?!」
「天は二物を与えずって言うのにね。弟にもちょっと分けてくれよって感じ。まあ、嫉妬する気力もなくなるぐらいの大差」
「幸さ~ん! ドンドン飲んでくださいよ!」
光は正の暗い雰囲気を変えようとグラスが半分にもなっていないのにビールを注ぐ。
「今日は飲むぞ~!」
「イエーイ!」
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