二者択一も許されない出会いについて

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二者択一も許されない出会いについて

「うおりゃぁ、出てこいやぁ」 無理無理無理! 俺は頭を振って大木の後ろに 震えながら隠れる。 だってあいつ不良だよ。 今どき絶滅危惧種の不良が 学ランに下駄履いて 野球バット持って 俺を探しているんだ。 そんな奴の前に ハイ、そうですかと のこのこ出ていくほど 俺にそんな度胸はない。 そう、それに俺、もやしっ子だし。 そもそもどうしてこんな事になったのだろう。 俺は春の日差しをたっぷり浴びての 学校帰り。 どこか抜けているなお前と言う評価を もらっているオレは 能天気に学校から家路についていた。 今どき珍しい大型犬の土佐犬を飼っている 家の前を通る時も、土佐犬は檻に入って 鎖につながれているのを知っているから 別に怖くもなく、檻の側に近寄って ちょっちょっちょっと檻の手前で 手を差し出して遊んでいるくらいだった。 土佐犬はそんな俺をちろんと見て 寝ていたが、俺はいつもの挨拶をして 満足した。 そして檻の前から立ち上がって 後ろを向いて帰ろうとしたとき、 黒い絶壁があった。 絶壁は人だった。 190㎝はあるだろうか。 ごつい顔に学ランを着ているのに 何故か下駄を履いている。 「おい、お前」 そいつは顔に似合った ガラガラだみ声で 言った。 ひぃっ。その一言で俺は 縮みあがった。 身長160センチのちびの俺は 学生カバンを抱きしめて 涙目になった。 するとそいつは言う。 「犬、好きか?」 「だ、大好きです。もう こねくりまわして腹出されると なでなでしちゃうほど好きですぅ」 そういうとそいつはニヤリと笑って 俺の肩をつかむと脇にどけて、 俺の後ろの土佐犬の檻の 扉を開けた。 「さぁ、好きなだけ触っていいぞ」 アナタハサワリマスカ?サワリマセンカ 続く
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